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ペルセンケイムのお話

今回の個展「ペルセンケイム」でメインに描いた絵は、私が作ったお話の一場面です。
それはいつか絵本にしたいなと思っているのですが、今文章にできそうだったので、書いてみました。
絵本にするときは、そのときはそのときでまた文章は変わるかもしれないけれど、お話は、こんなお話です。

ということで。

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ペルセンケイムと金色のくるみ

『ほらご覧なさい、あの、2つの銀河がぐるぐると渦を巻いて、集まっているところ。
あそこは”ペルセンケイム銀河”と呼ばれています。
あの銀河の中にはもちろんたくさんの星があって、その中でもひときわ大きくて美しい、青い星があります。

その青い星に棲んでいるのは、青い空を自由に飛び回ることのできる、鳥たちです。
たくさんの鳥たちには、鳥の王がいました。
しかしある時、その王の時代が終わり、王と一緒に生まれた太陽も、消えてしまいました。

鳥たちの星は、とても寒くなりました。
寒くて暗い時代です。
でも彼らには小さな希望がありました。
みなそれを必死で探しておりました。

その希望は、こんな言葉で鳥たちに伝えられていました。
皆さんはご存知ないでしょう、だってこれは、鳥の言葉でしか、知る者はいないんです。
でも僕は、それを知っています。
僕は鳥じゃないけれど、教えてくれたのは鳥です。
今夜は皆さんにも、こっそりその言葉を教えましょう。

”太陽が永遠に沈み闇が来た時、銀の河より金の実を探し出せ。見つけた者の頭上には、金の冠が輝くだろう”

”金の実”を探している者の中に、一羽のカラスがいました。
このカラスは青く透き通るような目をして、漆黒に輝く美しい羽を持っていました。
青い目のカラスはとても頭が良かったので、他の鳥たちのように闇雲に”金の実”を探すことはしませんでした。
カラスは、伝えられている言葉のことを何度も何度も考えました。

「銀の河というのは、どこの川のことだろう。そんな川、あっただろうか」

ある日カラスは、この”銀の河”を見つけるために、高く高く空を舞い上がりました。
空の上から見下ろして、銀色に輝くであろう川を見つけようと思ったのです。
しかし、いくら雲の上から覗いて見ても、銀色の川なんてどこにも見当たりません。

「おかしいなぁ。銀の河なんて、ここにはないぞ」

周りでは、カラスと同じことを考えて舞い上がってきたトンビたちが騒がしく議論しています。
青い目のカラスは、もっと静かに一人で考えにふけることが出来る場所を探して、さらに高く高く舞い上がりました。

高く高く飛びすぎたせいで、カラスは別の星まで行ってしまいました。
さすがに、ここまでは誰も来ていません。
その星はとても小さな星で、木が一本、ぽつん、と生えているだけの、何もない星でした。

青い目のカラスは、その木の下で、考えをめぐらすことにしました。
するとなぜか、辺りにとてもいい香りが漂ってきました。
ふと上を見ると、さっきまでなんでもなかった木に、花が咲いています。

「これは不思議だ。さっきまで咲いていなかったのに」

カラスは花をよく見ました。
赤い雌花と、房のように垂れ下がる雄花があります。

「これは、くるみの木だったんだな」

カラスは物知りなので、花を見てすぐにこの木がなんの木かわかるのです。
しばらく呆然として見ていると、今度は急に、花が枯れ始めました。
不思議なことに、あれよあれよと言う間にくるみの実がなりました。
カラスは不思議だと思いながら、くるみの実は大好物でしたので、1つとって食べることにしました。

しかし、なんということでしょう!
カラスがくるみの実を取ろうとした瞬間、そのくるみが、金色に輝き出したのです。

「そうか、”銀の河”とは、この銀河の中ということだったのか!」

鳥たちが棲んでいる青い星が、”銀河”の中にあるということを知る者は、あまりいませんでした。
それを知る知性を持った鳥、そして青い星の外まで飛べる強靭な翼を持つ鳥こそ、鳥の王にふさわしかったのです。

青い目のカラスは金色に輝くくるみをとってくわえると、元来た星のほうへ、まっすぐまっすぐ、弾丸のように飛び降りていきました。

カラスが地上に降り立つと、寒くて暗かった星に、朝日が昇り始めました。
鳥たちは新しく誕生した太陽を見て、新しい鳥の王が誕生したことを知りました。

「金の実だ!金の実が見つかったぞ!」
「新しい時代ばんざい!新しいおうさまばんざい!」
「ペルセンケイム王ばんさい!ペルセンケイム王ばんざい!」

鳥たちが口々に歓喜の声を上げながら、青い目のカラスの周りに集まって来ました。
こうして青い目のカラスは新しい鳥の王となり、青い星には、再び平和な時代がやってきました。

これが、今のペルセンケイム王に関する、僕が知っているお話です。』
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